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2023年、個人がデータで稼ぐサービスが増える!?

昨年は「メタバース」、「NFT」、「Web3」などに経済・情報雑誌からも注目が集まりました。今回はこういった技術的背景を踏まえて、2023年にご注目頂きたいデータ活用の経済トレンドとして、「個人が自分のデータで稼ぐ仕組み」の「X2E」をご紹介します。

自分のデータで稼ぐ時代に!?

2022年から続く海外のデータ活用の経済トレンドとして、「X2E(X to Earn、エックス・トゥー・アーン)」と呼ばれるサービスがあります。「X2E」は、「ユーザーがオプトインしたデータを企業に提供した際に、そのデータを活用して企業が利益を得る」といった従来のデータ流通のかたちではなく、「ユーザーがオプトインしたデータを企業に提供した際に、企業ではなくユーザーが対価を得ることができる」といった新たなデータ流通の形を目指したサービスです。こつこつ積み重ねれば資産になるかもしれません!

Xは「方法」、Eは「Earn(稼ぐ)」です。Xには「Move(動く)」、「Sleep(眠る)」、「Learn(学習する)」、「Play(遊ぶ)」など、日常の活動を意味する言葉がいろいろ入ります。特別な何かをして稼ぐのではなく、「何か日常的な行動をすると稼ぐことができる」という概念で、新鮮な驚きをもってWeb3界隈でブームになりました。その代表選手は「Move To Earn」です。

「Move To Earn」で最初の成功例の「STEPN」

日常生活の移動で稼ぐ「Move To Earn」は分かりやすく、2022年の春頃から「STEPN(ステップン)」が注目されました。「STEPN(https://stepn.com/)」は、オーストラリアのFind Satoshi Lab社が運営し、デジタルスニーカーを購入すれば誰でも参加できます。スマートフォンのGPSと加速度センサーが歩行履歴をアプリに記録して、歩数や時間に応じてステップン独自の暗号資産「GST(Green Satoshi Token)」を得ることから、まさに“歩くだけで稼げる”サービスです。

STEPN公式サイトより

さらに「STEPN」以外にも、「歩いて稼ぐ」ジャンルはいろいろあって、Onlife社が運営する「Aglet」などがあり、「Aglet」ではデジタル上でスニーカーを収集してゲーム内のアバターに仮想的に装着し、実際に歩いてスニーカーやゲーム内通貨を獲得します。

「Sleep」「Learn」「Play」…と続々登場する「X2E」

「Sleep to earn(眠って稼ぐ)」も新たに出てきたジャンルでしょう。「Apple Watch」のような身に着けるウエアラブルデバイスが普及して、睡眠時間だけでなく就寝中の心拍数や呼吸数などのデータを取得できるようになり、眠りが深いか浅いかなど“睡眠の質”を計測してスコアに応じて稼げる額が変動するサービスなどがあります。

他にも、「Learn to earn」では語学やプログラミング、Web3などのスキルをゲーム感覚で学んで習得度合いで稼ぐことができます。「Play to earn」では文字通りゲーム内で、モンスターを育成したり、カードでバトルしたりして遊びながら稼ぐことがます。「Eat to earn」はリアルの生活で食べ物の写真を撮影すると、ゲーム内にいる自分のペットにその食事を与えることができ、そのペットの成育やバトル結果で稼ぐことができます。

さらに、マインドフルネスを実践して瞑想習慣を身につける「Mindfulness to earn」などもあり、アイディア次第で「X2E」は23年もまだまだ広がっていきそうです。

「X2E」の追い風はデバイスの普及

「X2E」が注目される背景には、個人の生活上の行動データが容易に取得できるようになったことがあります。GPSと加速度センサーを内蔵するスマホに加えて、腕時計型デバイスが普及してきました。これにより、高価で特別な機器を個人が購入しなくても、走ったり歩いたりしたデータから睡眠データまで自分の行動をデータ化できます。さらに自分の行動データをNFTのような“対価”に換えることもテクノロジーで可能になりました。

さらに、得た対価を流通させ、取引する環境も徐々に整備されていくでしょう。ブロックチェーンをインフラにしたWeb3の世界では“新しい経済圏”が形成されます。「トークンエコノミー」とも呼ばれていますが、こうした新しい経済圏が日本でも身近になり始めるのが23年なのかもしれません。

日本には、すでに「データで稼ぐ」の土壌がある

「歩くだけで稼ぐ」に近いものとして、日本ではすでに「歩いてポイントをためる」があります。例えば、NTTドコモの「dヘルスケア」は18年5月からサービスを開始し、22年1月には累計1000万ダウンロードを超えました。

dヘルス公式サイトより

ご存知の通り、日本には「ポイ活」という言葉もあるほどで、複数の事業者間で使える共通ポイントサービスのインフラが日本では広く普及しており、ユーザーにも簡単にお得な体験が得られると親しまれています。

日本でのポイントの歴史は、サービス提供者が与える「おまけ」を起源に進化してきました。共通ポイントサービス「Tポイント」が2003年にスタートしますが、1997年には移動距離に応じて価値を付与する大先輩のマイレージをANAとJALが国内線で始め、今では他のポイントと交換できるので流通する仕組みができています。キャッシュレス決済も浸透して「1ポイント=1円」でモノやサービスが買える疑似通貨になってきました。

こうした土壌は海外からも注目されており、米国シリコンバレー発で海外でもユーザーを伸ばしている「Miles(マイルズ)」が2021年に日本上陸し、2022年10月には300万ダウンロードを達成。歩いた距離に応じてたまるポイントをさまざまな特典に換えるウォーキング・アプリの認知を拡大しました。

Miles公式ブログ、2022年10月25日記事
「無料マイレージアプリMiles、1年で300万ダウンロードを達成」より

さらに参入は相次ぎ、楽天グループもポイントをためながら健康管理ができる「楽天ヘルスケア」を2022年10月に始めました。こちらは、歩くだけでなくユーザーが使い続けるためのサービス展開を進めており、処方せん医薬品受取のネット予約やオンライン服薬指導サービスとの連携も2023年以降に予定しているそうです。

このように「生活しながら稼ぐ」なかで、とくに「歩く」のサービスが人気の背景には、幾つかの理由が考えられます。例えば、ウォーキングは毎日誰もが行う行動で、手軽に始めて運動不足を解消できるエクササイズにもなります。さらに、専用アプリで歩数や距離、消費カロリーのデータを集め、AI(人工知能)分析で生活習慣の改善を提案することが可能です。そのうえ、歩いてためたポイントは、身近なプラットフォームを通じてギフト券などに交換できます。このように、「歩きながら稼ぐ」は、ユーザーが継続するモチベーション設計が作りやすいからかもしれません。

野村総合研究所(NRI)は、民間企業のポイント・マイレージの発行額規模が2021年度の1兆834億円から2026年度に1.2兆円へ拡大すると予想しています。

NRIリリースより https://www.nri.com/jp/news/newsrelease/lst/2022/cc/1102_1

自分の行動データが健康増進とポイント取得を両取りできるメリットがあるウォーキング・アプリは、この市場に違和感なく収まると考えられることから、日本の消費者の意識はある意味では、2022年に海外で火が付いた「X2E」より先を行ってるとも言えます。

そう考えると、海外で生活の色々なデータで稼ぐためのサービスをヒントに、2023年には国内でも「自分のデータで稼ぐ」ための様々なサービスの展開が期待できるかもしれませんね。

日本経済のメインシナリオは「跳ねる」?

さて、日本経済全体の見立てはどうでしょう。主要調査会社と金融機関30社に行った『週刊エコノミスト』のアンケートで、実質GDP成長率は22年の1.5%に対して23年は1.3%です。2.2%と最も高く予測した大和総研は「サービス消費やインバウンド(訪日外国人客)を中心に経済活動が正常化することによる回復余地は大きい。政府の総合経済対策も下支えする」とみています(23年12月20日号)。「約40年ぶりの高インフレや人手不足などを背景に、春闘では賃金改定率が大幅に上昇する可能性」も指摘します。
https://www.dir.co.jp/report/research/economics/outlook/20221221_023505.html

中国は22年12月にゼロコロナ政策を大幅に緩和して、23年1月には入国時の隔離措置を撤廃しました。日本は中国本土からの入国者の検査を義務づけて入国規制を強化していますが、いずれは緩和されて観光客は増えるでしょう。米国や欧州の経済が景気後退に入る懸念も指摘され、日本も無傷では済まないかもしれません。それでも経済正常化に向けて歩んでほしいものです。えとの卯(う)にちなんだ株式相場の格言は「卯は跳ねる」です。文字通り23年は跳ねてほしいですね。


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