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今注目のAIアートとは【データ×アート】

先日米コロラド州で開かれたコロラド・ステート・フェアで、何とも重厚な空気感を醸し出す絵画が最優秀賞を獲得。
ところが受賞後、その作品はAIによる自動生成のアートだと制作者が明かし、大きな話題となりました。

コンピューターが芸術を生み出せるのか、芸術家とは何か。
今後AIがアートの世界にどのような影響を及ぼすのか?についてまとめました。

ジェイソン・アレンさんがAIを使って制作した絵/Courtesy Jason M. Allen

AIアートとは?

AIアートは、AIの技術を用いて新しく生み出されたアート作品。
人間が芸術作品を生み出すためには、構想やデザインセンス、画風、色使いを考え工夫し、新しい作品を作っていきますよね。
一方、AIアートは様々なデータから特徴を抽出し、組み合わせることでオリジナルな作品を生み出します。
複数のキーワードを入力して指示すると、その要素を取り入れたオリジナルのアートを生み出してくれるツールも。
また、学習させた数多くの画像データから特徴を抽出することから、多彩な作風の作品が生成できることも特徴です。
入力するキーワードを少し変えるだけで、全く違うイメージの画像が生み出されるので、そのロジックはとても興味深いですね。

最近のSNSでは「#AIアート」のタグで多くのオリジナル作品が公開されているようです。(皆さんとても素敵な作品を上げていますので、気になる方は是非検索してみてください)

Instagramで投稿されているAIアート作品

AIアートの作り方

AIアート生成ツールにはさまざまな種類があるため、簡単にご紹介します。

・OpenAI「Dall・E2」

Dall・E2(ダリツー)は、AI研究を行うアメリカの非営利団体OpenAIによって2022年4月に発表された画像生成AIです。
画家のサルバドール・ダリや、CGアニメのキャラWALL-Eが名前の由来。
文章でキーワードを入力し、指示するだけでそのイメージに合ったAIアートが生成可能。OpenAIは2020年7月に文章生成AIサービス「GPT-3」を公開し、多くの企業・研究機関で利用されています。Dall・E2も同様に、将来的に多くの企業や個人が使用できることを目指していると考えられます。
そのため、最近は招待制でβ版の配布も始まっているとか。

・Google「Parti」

約数百億件の入力情報を解析することで、リアルな画像を生成できるツール。イメージトークンと呼ばれる画像セットを解析し、その情報を活用して新しい画像を構成する仕組みが特徴です。
トークンなどの学習素材を解析すればするほど、リアルな画像の仕上がりになるそう。ただ、このモデルは一般には公開されておらず、あくまでも研究用のAI、という位置づけなのだそう。

・Microsoft「NUWA Infinity」

こちらは、画像の「枠外への拡張」や「動画生成」の実行が可能。
与えたれた画像を枠外に拡張できる機能は、人が想像力を働かせるようにして、画像の外側にあるものを描き出すのに似た機能で、他ツールにはない点が特徴だそう。

・Midjourney「Midjourney」

Twitterでも良く見るのがこちらのツールで生成されたアート。
冒頭の最優秀賞を獲得した作品も、このツールで作られました。

特徴は、スラッシュコマンドのimagineと、好きな単語を入力するだけで、わずか1分で4枚もの画像を出力することができる点。
さらに、出力された画像をより高解像度化させたり、構図やタッチなどが似ている別のイラストへと出力することも可能だそう。
現在はβ版が一般公開されており、Discordのアカウントがあれば誰でも無料トライアルが可能になっています。
無料版でも25回のイラスト作成が体験できるので、まずはこちらのツールを試してみるのがよいかもしれません。

Midjourneyを使って、当社社名をキーワードに代表の簗島が制作した作品

AIがアートに与える影響

アート界でもっとも期待が集まっているのは、やはり「AI(機械学習)」による「画像認識」。
上記に紹介したツールのように、画像データを取り込み、パターン認識のトレーニングを繰り返すことによって、建物・人物・川といった絵を構成する視覚的要素をはじめ、表現スタイル・ジャンル・アーティスト・構図なども自動的に解析できるようになりました。

また、「画像認識」を洗練させることで、大量の画像データの中から「視覚的類似性」を持つものをピックアップし、作品のプロパティデータ(メディウム、サイズ、制作年、制作場所など)を組み合わせ、特定のアーティストの全作品を包括的に分析したり、特定の年代にどのような表現が世界中で行われていたのかなどを俯瞰することも可能になります。

メトロポリタン美術館はマサチューセッツ工科大学とマイクロソフトと連携し、所蔵作品の47万点におよぶ画像データをすでに「機械学習」に活用しているとか。
AIは画像認識のプロセスにおいて、美術史の定説などを考慮しません。
そのため、これまで美術史家やキュレーターが思いもよらなかったような関連性を作品の中に見出すことができます。
新たな解釈や、新鮮な角度からの展覧会企画が期待できますね。

車のデザインにもAIの機械学習を採用


「A110サストルガ」(Alpine A110 Sastruga)

このアートカーは、アルピーヌと芸術の分野における人工知能(AI)のパイオニア、「オブビウス」のコラボレーションで生まれました。
アルピーヌが活躍した数々のサーキットのピットレーンや追い越しゾーンなどの画像をAIに学習させ、さらにアルピーヌの原点であるアルプスの自然として、風に侵食された雪が地面に幾何学的な起伏を残すサストルギ現象から受けたインスピレーションを、そのイメージに反映させて車体のデザインにしたとか。
(確かに、何とも斬新なデザインですね)

アルゴリズムを象徴する数式のデザイン

アートにAIを使うことは悪?

AIアートに対しては賛否両論あり、特にアーティストからは批判的・悲観的な感想も少なくないそう。
ただ一つ言えることは、何か創作してみたいと思っても、時間や道具等のリソースにより踏み出しにくかった人のきっかけになる点はとてもポジティブだと思います。
また、アウトプット(生成)自体はAIだとしても、生み出すまでのプロセスに人の考えや心があれば、ツールとしてAIを上手く使っていけるのではないでしょうか。

実際にAIアートで最優秀賞を獲得したアレンさんも、作品の完成イメージを描いた上で時間をかけながら指示する言葉に微調整を加え、900ものバージョンを作成して最終的に3枚の画像を完成させたそう。
時間にして、80時間以上を要したそうです。

アーティストの方の活用方法として、『産みの苦しみ』を緩和し、他のクリエイティブな部分にリソースを割くことが可能になるのではと思います。

アーティスト以外の方も、お家のリフォームや庭づくり等、頭の中のデザインや色彩イメージを共有する際のツールとして活用できそうですね。

新しいものを必要以上に怖がらず、受け入れて楽しむことは、これからの技術革新が続く未来を生き抜くために必要な能力かもしれません。

まとめ

生活の中でデータがどのように使われているのか?という一例で、今回はAIとアートについて調べてみました。

身近なデータ活用の事例を、今後も発信していきます。ではまた!

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