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2024年を数字で振り返ってみる

早いもので2024年もあと数週間で終わります。
今回のnoteでは、この1年を、数字で振り返ってみたいと思います。


記録的に暑く、そして暑かった夏


12月に入りようやく冬らしい日も増えてきましたが、2024年の夏はとにかく長く、暑かったという人が多いのではないでしょうか。まず最初の話題は、数字で今年の「夏」を語ってみましょう。

気象庁では6月から8月の3ヶ月間を「夏」として真夏日、猛暑日の統計を発表していますが、東京都心でこの期間の真夏日(最高気温30℃以上)は61日(平年差+18.0日)と、実にこの期間の3分の2を占めています。さらにそのうち猛暑日(最高気温35℃以上)は19日(平年差+14.5日)となっています。この期間、熱帯夜も37日(平年差20.8日)と寝苦しい夜が続きました。9月以降も猛暑は続き、東京では9月18日には過去最も遅い猛暑日、10月19日には過去最も遅い真夏日が観測されました。10月には、春に咲くはずのソメイヨシノが開花する様子も報告されています。厳しすぎる暑さのせいで早くに葉が落ちてしまったことで、夏にできた花芽の成長を抑えるホルモンの分泌が止まってしまい、花芽が休眠状態をとることなく成長して咲いてしまったのだそうです。

暑かったのは東京だけではありません。日本全国のアメダス地点で観測された猛暑日地点数の積算は、2010年以降で最も多かった2023年の7,084を3割以上上回り、10,273に達しました。富士山の初冠雪は11月7日と観測開始以来最も遅くなり、平年の10月2日に比べて1ヶ月以上も遅くなりました。

2024年の猛暑の原因としては、地球温暖化に加えて、2024年春まで続いていたエルニーニョ現象(赤道〜南米沖にかけての太平洋の海面水温が上昇する現象)によって大気全体の気温が高くなっていたことがあります。加えて、太平洋高気圧の勢力が例年よりも強かったことが日本列島に記録的な暑さをもたらしました。

猛暑の後の冬は寒くなるといわれていますが、今年もどうやらそうなりそうです。エルニーニョ現象は終わって現在の太平洋の海面水温は下がってきており、冬の間は若干平年よりも低めで推移すると予想されています。一方で、夏の間に高かった日本海の海面水温は下がり切っておらず、大気中の水蒸気量が多い状態が続いています。この状態で強い寒気が南下すると、日本海側は大雪になる可能性があります。日本気象協会の予報では、12月から1月は平年並みの寒さとのことですが、昨年2023年が記録的な暖冬だったのに比べると厳しく感じられる冬になりそうです。

気温によって冬物商品の需要は増減します。日本気象協会は気象データと小売店パネル調査(店舗の売上実績データ)をもとに、2024年冬の予報と需要の増減について予測してます。アパレルではダウンコート、手袋などの防寒着、食品では温かい食事のための鍋商材やスープ、ココア、カップ麺などが売れる予想です。他にも乾燥防止のためのハンドクリームやリップクリーム、アカギレ対策の絆創膏、カイロ、うがい薬などの風邪予防商品が売れやすくなるとしています。

ただし、2月になると急に気温が上がり、これらの商品の需要も急速に下がる可能性があります。気温が上がるということは花粉も飛びはじめるということです。2025年は特に西日本と東北でスギ花粉の飛散量が多いという予報で、早めの対策が必要になりそうです。

上昇がとまらないエンゲル係数

経済分野で今年話題になったのが「エンゲル係数の上昇」です。エンゲル係数とは、家計消費支出に占める食費の割合です。一般に、エンゲル係数が高いということは家計にゆとりがなく、生活水準が低いことを示しているとされています。

日本のエンゲル係数は上昇傾向にあり、2024年1月から8月のエンゲル係数(2人以上世帯)は28.0%と1982年以来の高い水準となりました。といってもピンとこないと思いますので、他国と比べてみましょう。2022年のOECD主要加盟国のデータを比べてみると、アメリカ、ドイツなどは20%を切っているのに対し、日本は26%となっています。これよりもさらに2%上がってさらに上昇傾向が続いています。

(2022年のOECD主要加盟国のエンゲル係数)

理由としては、円安によって食料品の価格が大幅に上がっていることがまず挙げられます。日本の食料自給率はカロリーベースで38%、6割以上は輸入に頼っていますので、まずここにはダイレクトに円安が響きます。さらに、国産食料も生産に必要な肥料やエネルギーは円安の影響を受けますので、これも値上がりしています。2024年10月の消費者物価指数をみると、2020年を100とした時の食料品の指数は120.4と、20ポイント以上も上昇しています。

2024年8月の3人世帯の食費総額は9万3130円と前年同月比5%増、イベントの多い12月を除くと単月ではじめて9万円を超えました。レシピ検索サイトでは、「ちくわ」「えのき」などの安い食材を使ったレシピの検索数が過去最高水準で増えているのだそうです。

「日本は貧しい国になった」とよく言われますが、こうして数字で現実を突きつけられると辛いものがあります。一度上がった物価の値下がりはなかなか期待できませんから、所得が上がることを期待するしかありません。2024年の春闘では5.33%の歴史的な賃上げが実現しましたが、2025年も同水準かそれ以上の賃上げを期待したいものです。

過去最低の出生数

減少を続ける国内の出生数ですが、2024年はついに70万人を割り込む可能性が出てきました。厚生労働省が発表した人口動態統計(概数)によると、2024年上半期(1〜6月)に生まれた赤ちゃんの数は、前年同期比6.3%減の329,998人にとどまりました。政府の公式予測では出生数が70万人割れするのは2043年ですので、19年も前倒しになる見込みです。

人口動態統計の1899年から2023年まで(1944-1946年は戦争のため欠落)のデータをもとに、2023年までの出生数予測をしてみたのがこちらのグラフになります。

戦後の第一次ベビーブームで生まれた人が親となった第二次ベビーブーム(1971年から1974年)の後出生数は減り続けていますが、2010年以降下落のペースはさらに上がっています。その結果として、現象も指数関数的になることが予想されています。

政府公式の予測では出生数60万人割れは2052年、50万人割れは2071年となっていますが、今回の予測ではそれぞれ2027年(25年前倒し)、2032年(39年前倒し)となっています。さらに先を見ていくと、2067年には10万人を割り、2100年には17,519人、そして2198年にはついに100人を割るという結果になりました。

もちろん単純な数式を当てはめただけの予測で諸々の要因は考慮していないので、このままの勢いで減っていくということはないでしょう。それでもこのままトレンドが続けば22世紀初頭には出生数が年間2万人を割っているという計算結果は衝撃です。政府は「異次元の少子化対策」といって相変わらず子供を産ませるための施策をがんばっているようですが、産める人の数が減り続けていく一方なのですから、「中で増やす」ための施策にはすでに限界がきているように思えます。日本という国を維持するために人口の維持が必要なのであれば、移民の受け入れや国際結婚の推進といった「外から補充する」ことをもっと真剣に考える時ではないでしょうか。

インバウンド復活 訪日外国人は過去最多に

暗い話題が続いたので少し明るい話題の数字も紹介しておきます。2020年から始まったコロナ禍で旅行業界は壊滅的な打撃を受けましたが、2023年5月のWHOによる終息宣言を受け、移動制限が全て撤廃されました。以後、訪日外国人の数は急速に回復し、2024年2月からは9ヶ月連続で同月過去最高を記録しました。外務省が毎月発表している訪日外客数は、2024年10月に単月過去最高の3,312,000人、10月までの累計は30,192,600人となり、1964年の統計開始以来、過去最速で3,000万人を超えています。

彼らの「円安」パワーを見込んだ飲食店の値付けも話題になりました。豊洲市場近くの観光施設で訪日観光客をターゲットにした1万8,000円の海鮮丼「インバウン丼」、築地市場の2万2000円の「ウニ丼」や1万3000円の「ウニ乗せサーロイン串」、浅草の1万4800円の神戸牛サーロインステーキなどが話題になっています。海外は日本よりもさらに物価上昇が激しく、加えて円安なので、日本人から見ると驚くような価格でも割安に感じられるようです。

「数字がニュースになる」時代に貢献する

他にも今年は、大谷翔平選手の「50-50」(50本塁打-50盗塁)達成、パリオリンピックの金メダル20個・メダル総数45個(いずれも海外で開催された大会では最多)、年収106万円の壁・130万円の壁(見直しがほぼ決まりました)、日経平均株価(4万円超)、高騰を続ける電気代など、多くの数字がニュースになりました。
 
数字がニュースになるということは、データが私たちの暮らしの中にそれだけ溶け込み、自然に関心を持たれるようになってきたということでもあります。データによってものごとを把握し、データによって意思決定することが、より良い形で社会に広まっていくことを願
い、インティメート・マージャーは2025年もさまざまなことに取り組んでいきます。
 
(参照情報)
2024年の猛暑日・真夏日などの日数
https://www.data.jma.go.jp/stats/stat/202415/tem_ctg_days_202415.html

夏の振り返りと2024年秋後半の天候、秋冬の消費活動
https://weather-jwa.jp/news/topics/post3504

2024年12月は全国的に冷え込みが強まり、冬物需要が伸びる見込み
https://weather-jwa.jp/news/topics/post3998

秋なのにサクラ咲く!猛暑の影響で水元公園の河津桜やソメイヨシノが開花、注目を集める
https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/c35f1665c046ec1e8d0b68f7ee69a7f907376d83

【2022年】世界のエンゲル係数ランキング(OECD) https://sekai-hub.com/statistics/oecd-engels-coefficient-ranking-2022

2020年基準消費者物価指数(全国 2024年10月分)
https://www.stat.go.jp/data/cpi/sokuhou/tsuki/pdf/zenkoku.pdf

一家の食費、月9万円突破 節約献立は2年前から様変わり
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC174DQ0X11C24A0000000/

賃上げ率は5.33%で33年ぶりの5%台  ――厚生労働省「2024年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2024/10/top_01.html

出生数70万人割れの公算 今年上半期33万人、6%減
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA056VS0V01C24A1000000/

人口動態調査
https://www.e-stat.go.jp/dbview?sid=0003411595

ターゲットを絞り出生減トレンド反転を
https://cigs.canon/article/20241105_8425.html

訪日外客統計
https://www.jnto.go.jp/statistics/data/visitors-statistics/

2万円超の丼、1万円超の串焼きも訪日客には「バーゲン」 築地グルメ、もはや日本人の口には入らない?
https://www.tokyo-np.co.jp/article/333590


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