Z世代と生成AI調査〜魅力ある企業になるための生成AIとの向き合い方〜
GPTストアのオープンやWindowsパソコンにCopilotキーが搭載されるなど、2024年も年初から盛り上がる生成AI界隈。ビジネスでどう活用するのか、あるいはビジネスでの活用は時期尚早なのか、セキュリティは大丈夫なのかとさまざまな議論がされつつも、活用は待ったなし、これからは生成AIを活用できる人材がどの業種でも職種でも求められるという論調が増えています。
実際のところ生成AIは企業でどの程度活用されているのか、そしてこれから社会に出ていく「Z世代」は生成AIとどのように接していこうとしているのか、ということをいくつかの調査データで見ていきたいと思います。
■まずは企業での活用状況を見てみよう
企業における生成AI の活用状況に関する調査はいくつかありますが、まずはPwC Japanの調査を見てみましょう。2023年5月と2023年10月に日本国内の年間売上500億円以上の企業で働く管理職を対象にした調査を実施しています。
生成AIの認知や活用度合いは、2023年に飛躍的に伸びています。2023年5月には生成AIという言葉を知っている人は56%、利用したしたことがある人はわずか10%でした。対して、2023年10月には生成AIの認知度は96%に達しており73%が生成AIの利用経験があると回答しています。
さらに、社内における活用の推進度合いでは、2023年5月の時点では生成AI活用を活用している、あるいは活用を検討していると回答したのはあわせて22%にとどまっていましたが、2023年10月時点では87%が既に生成AIを活用中、あるいは活用を検討中と回答しています。
では、実際にどのようなことに活用しているかというと、「報告書や議事録などの要約」「データ収集や調査・リサーチ」「報告書やメールなどの文章執筆」「文章の添削や校正」といった回答が上位となっています。文書を作成する業務や、情報収集の効率化への活用が進んでいるといえそうです。また、ブレストやアイデア出しへの活用も比較的上位にきています。
興味深かったのが、回答者の半数近くが生成AIの活用は自社にとって「脅威」になり得ると考えていたことです。具体的には、生成AIによって競合他社に先を越される、自社のビジネス領域に他社が入ってくる可能性があるということを脅威に感じています。この半年で急速に活用が進んでいる裏には「取り組まなければ遅れてしまう、競争に負けてしまう」という恐怖感があるのかもしれません。
■悩みはやはり人材不足
一方で、生成AI活用における課題として最上位に上がっているのが、「必要なスキルをもった人材がいない」ということです。またこの課題については、自社だけで解決が難しいと考える人も多くなっています。
■学校で生成AIを学ぶZ世代
対して、これから社会に出ていくZ世代は、生成AIをどう見ているのでしょうか。Z世代とは、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた世代で、2023年現在12歳~28歳前後の年齢層に当たりますが、ここからは、日本財団が2023年8月、夏休みの時期に全国の17歳-19歳 1000名を対象に実施した意識調査を見ていきましょう。
調査対象者のほとんどが高校生、高専生、大学生、専門学校生など、社会に出る前の学生です。彼らが物心ついた時には、パソコンやインターネット、SNSやスマートフォンが身近な存在でした。デジタルネイティブとして育ってきた彼らにとっても、生成AIは新しい概念です。
まず、生成AIという言葉の認知率は86%と高い水準にありますが、自分で利用したことがあるのは36.1%となっています。ただし、使用したことがない人でも、約6割は生成AIを使ってみたいと思っています。
では使ったことがあるという人が何に使っているかというと「学校の宿題や職場で使う資料の文章を作る」「授業などで理解できなかったことを調べる」「新しいアイデアを発想する」「検索エンジンより効率良く検索する」などが上位にあり、大人と同様に「文章作成」「検索」「アイデア出し」に活用しているようです。しかし最も多かったのは「暇つぶし(特に用はない時に使ったことがある)」でした。Z世代は生成AIに対して、ビジネスパーソンのように「活用しなくては、役立てなくては」と意気込むことなく、スマホの他のアプリと同様に暇つぶしにちょっと使ってみようかな、という接し方をしているのかもしれません。
今の学生である彼らの大きな特徴が、学校でもICTに関して教わっているということです。約3割が学校の授業で「生成AIの仕組み・特性やリスクについて学んだことがある」と回答しています。また、約2割は「学校や大学での生成AIの活用について、ルールが定められている」、約1割が「生成AIを活用する授業を受けたことがある」としています。割合は少なく見えるものの、ChatGPTの登場で生成AIが一気に身近になったのが2022年の終わりであることを考えると、1年も経たないうちに3割以上の学校で授業の題材として取り上げられるというのはむしろ早いといえるでしょう。「学校で生成AIについて教わった」新入社員がもうすぐ企業にやってきます。
■生成AIを活用できる人材は生成AIを活用している企業に集まる
昨年、インティメート・マージャーでは、「就活にすぐ使える!AI活用術が学べる1day インターンシップという企画を実施しました。こちらに参加した学生を対象にしたアンケートの結果もご紹介しましょう。「就活×AI活用」をテーマにしたイベントの参加者なので、Z世代の中でも特にAIに感度の高い学生が母集団になります。
まず、生成AIを使ったことがある人の割合は81%、利用者の3分の1以上は週1回以上の利用者となっています。
生成AIを何に利用しているのか、自由解答で記入してもらったところ、以下のように多岐にわたりました。
就活中の学生なので「エントリーシートの添削」「就活スケジュールの管理」といった項目が特徴的ですが、全体的な傾向としては、アイデア生成、文書作成支援、プログラミング、情報収集など、企業における生成AIの用途として挙げられたようなことにもしっかりと活用している様子が伺えます。
では、AIを既に使いこなしている学生達からみて、就職先の企業の生成AIへの取り組みは就職先を決めるにあたって影響するのでしょうか。結論からいうと影響はあるようです。回答者の96%が生成AIの活用をしている会社で働きたい、という考え方に対して「非常にそう思う」もしくは「そう思う」と回答しています。さらに、8割以上の学生が、生成AIの活用度を会社選びの際にある程度以上は参考にすると回答しています。
「生成AIを活用するスキルを持った人材がいない」という企業にとって、生成AIを既に活用している学生はぜひ採用したい人材だと思います。そのような人材を採用するためには生成AIを活用する企業になる必要があるという、鶏が先か卵が先かという悩ましい状況です。
これに関連して、Exa Enterprise AI が2023年12月に実施したアンケートで興味深いデータがありました。生成AIの導入状況別に、利用の定着度を調べてみたところ、希望者のみの導入、対象部門を決めて導入などの限定導入をおこなっている企業では約7割が「ほぼ使われていない」としたのに対し、全社的に導入した企業ではその割合が大きく下がり、活用している社員の割合が増えています。
EXA Enterprise AIでは、「全社で導入することで、利用機会が幅広く提供されて社内での認知が進み、活用のリテラシーが高い利用者を中心に自発的な利用が進む」と分析しています。まずは全社で生成AIを導入するところからスタートすることで。社内の活用が進み、生成AIを活用している学生からも魅力ある企業となって、人材不足の課題の解決に向けて動き出すことができるかもしれません。
インティメート・マージャーでは生成AIをはじめとしたAIツールを活用して業務プロセスの改善に取り組む長期インターンを募集しています。AI活用スキルが身につくインターンシップにご興味のある方は、ぜひお問い合わせください。
<参照情報>
生成AIに関する実態調査2023 秋 (PWC Japan)
https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/generative-ai-survey2023_autumn.html
日本財団18歳意識調査結果 第57回テーマ「生成AI」 (日本財団)
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2023/20230901-93494.html
ChatGPTなど生成AIを「業務で日常使用」は3割 、8カ月で約25ポイント増、活用促進の施策と全社導入が利用率向上のカギ (EXAWIZARDS)
https://exawizards.com/archives/26466/
[AI1]グラフ再作成時に全体の数値のみ拾います(男女別はカット)
[AI2]グラフ再作成時に全体の数値のみ拾います(男女別はカット)