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"人間"と"AI"が融合するために必要なのは「人間のリスキリング」!(ChatGPT)

年末からAI関連の話題を独占しているといってもいいChatGPT。
OpenAIが開発した言語モデルGPT-3.5をベースにして構築されたチャットボットです。話しかけてみると、とても自然な文章で応答します。お題を出して小説やエッセイを書かせてみたり、会話してみたり、人生相談してみたりとさまざまな楽しみ方がされています。大学の入試問題を解かせてみたら合格点をとってしまった、レポートを書かせてみたら10分でそれなりの文章ができてしまったという話も多数あり、海外の大学ではChatGPTをどう扱うかが大きな課題となっています。

「人間の代わりに検索してくれるAI」への期待

さて、ChatGPTが話題になった当初によく言われたのが、「Googleはもう終わり。質問すれば答えを返してくれるChatGPTが検索を置き換える」というものでした。確かにChatGPTでは、自然言語で入力した質問に対して、さまざまなサイトを一気に検索して要約したように見える答えが帰ってきます。しかしよく見ると情報が古かったり間違っていたりすることもあります。

それも当然で、まず、ChatGPTのAIモデルが使用しているトレーニングデータは2021年までにインターネット上から収集されたデータなので、それ以降の情報は持っていませんし、ネット上の情報なので正しいものも誤ったものも混ざっています。また、ChatGPTはトレーニング済みのAIモデルに対して質問と回答に対するフィードバックを繰り返す強化学習でモデルをチューニングしていますが、その際に「どの情報が正しいか」を判断できる信頼できる情報源(Ground Truth)がないため、誤った知識はそのまま残ってしまいます。同様の質問はOpenAIにもよく寄せられるようで、そのものずばり「Why doesn't ChatGPT know about X?」というFAQが掲載されていました。

このような誤解が生まれるのも、「自然言語で対話しながらインターネットを検索する」機能を待ち望んでいる人がいかに多いかということなのかもしれません。2023年2月にはGoogleはAIチャットボットBardをまもなくリリースすることを発表しました。Microsoftはチャット検索を組み込んだ「新しいbing」をリリースし、Windows11に統合しました。「知りたいことを教えてくれるAI」への期待は高まる一方です。

人間の能力を肩代わりさせる

さて、検索ができないのであれば、ChatGPTは何をしてくれるのでしょうか。「Why doesn't ChatGPT」の中に以下のような一文があります。

It can only generate responses based on its own internal knowledge and logic
((ChatGPTに)できることは、自己内部の知識とロジックに基づいて回答を生成することだけなのです)

確かにChatGPTの持つ、膨大な量の知識を要約する能力は、人間に真似ができるものではありません。ChatGPTのすごいところは、この要約能力を「会話」という誰でも使えるインターフェイスで利用できることだといえるでしょう。つまり、複雑なコマンドを入力しなくても「この文章を要約して」と依頼すれば答えが返ってくるのです。

実際、数千字の文章を渡して「内容を箇条書きにして」というと、見事にまとめてくれるので、全部読まなくても短時間に内容を把握できます。文章の構造も内部のロジックが把握するので、メールの文章の中から依頼事項と報告事項と相談事項を抜き出すといったこともできます。これは人間にもできることですが、ChatGPTの方がうまくやれそうです。逆に、箇条書きから文章のドラフトを作成させて、少し手直しすれば、ドキュメント作成は従来よりもずっと捗るでしょう。

ChatGPTが蓄えた大量の知識を、子供の「なぜ」に答えるために親が活用するというアイデアもあります。「子供の質問に対しては親が一緒に調べてみよう」といいますが、何に興味を持つかわからない子供の質問に対して、そもそも予備知識が無ければ「調べ方を調べるための時間」が必要になります。そんな時、ひとまず親がChatGPTに聞いてみることで、調べる手がかりを見つけられます。手間の一部をChatGPTに代替してもらうことで、時間と理由に子供の質問を遮ることが減るはずです。

ChatGPTに限らず、新しい技術に対して人はさまざまな期待をします。そして思った通りのことができなかった時には、失望して「やっぱり使えない」と手のひらを返します。AIの分野では特にその傾向が顕著に思えます。もう少しフラットに、いろいろなことをやらせてみて、得意なことを見つけて日常にうまく組み込むことを考えると、さまざまな可能性が見えてきます。

Human Augmentationの1要素としてChatGPTをとらえてみる

テクノロジーによって人間の能力を拡張するという「人間拡張」(Human Augmentation)という概念があります。例えば、顕微鏡は、拡大することで人間の視覚の解像度を上げたとみることができます。実際、光学顕微鏡を発明したロバート・フックは、著書の中で「顕微鏡は視覚の拡張である」と述べ、視覚以外の感覚(嗅覚、聴覚、触覚、味覚)の拡張可能性についても言及したのだそうです。

フックが顕微鏡を発明したのは17世紀ですが、21世紀の今、人間拡張といえば情報技術を活用して人間の能力を補い、拡張することを指します。「技術を利用する」にとどまらず、人間と技術が融合してどちらか一方では得られないような能力を発揮されることを目指して研究が進められています。

東京大学の暦本純一教授が運営するヒューマンオーグメンテーション社会連携講座(https://humanaugmentation.jp/)では、人間拡張を4つの方向性に分類しています。

ChatGPTの「すごい要約能力」は、人間の脳の能力の拡張であるとみなすことができそうです。さらに、「内部に蓄えた大量の知識」も、(若干思い違いが混ざっていたり、新しいことには詳しくないかもしれないけれども)人間であればインプットする時間が取れないほどの大量の記憶をいつでも自在に出し入れできる状態に置いていると考えれば、やはり脳の能力を拡張しているといえるでしょう。そういう視点で見ると、ChatGPTは「認知拡張」をPCやパソコンを使って誰でも実現できるという点で、画期的な技術だと考えられそうです。

人間とAIの分業を推進する

ChatGPTのようなジェネレーティブAI(コンテンツやモノについてデータから学習し、それを使用して新しいアウトプットを生み出すAI)を自分の能力の拡張として使いこなすには、自分がしていることのうちAIが得意なことをうまくAIに任せる「分業」のスキルが必要になります。

インティメート・マージャーでは、社員が「人間とAIの分業」のスキルを身につけ、より生産性の高い環境で働けることを目指して、2023年3月「ジェネレーティブAIサービス利用補助制度」を導入しました。この制度は、会社が指定するジェネレーティブAIサービスの活用を希望する従業員に対し、その費用を一部負担することで、各々の業務においてAIとの分業に必要なスキルを身につけさせ、最終的にビジネスプロセス改善の促進を目的としています。

技術革新やビジネスモデルの変化に対応するために新しい技術やスキルを学ぶ「リスキリング」が注目されていますが、「AIへの仕事の任せ方」もそのテーマの1つだと私たちは考えています。大学でも、教室でChatGPTの利用を禁じるのではなく、積極的に活用させてより優れたアウトプットを目指す動きも出てきています。技術との向き合い方を、「できるか、できないか」から「できることを仕事や生活に組み込む」に変えることで、人間の可能性が高まるのは幸せなことではないでしょうか。

参考文献:
Introducing ChatGPT
https://openai.com/blog/chatgpt

AIツールのChatGPT、米名門大の試験を次々通過
https://www.cnn.co.jp/tech/35199213.html

「ChatGPT」普及で米国の大学に起きている大変化
https://toyokeizai.net/articles/-/650475

Why doesn't ChatGPT know about X?
https://help.openai.com/en/articles/6827058-why-doesn-t-chatgpt-know-about-x

ヒューマンオーグメンテーション社会連携講座
https://humanaugmentation.jp/

ペンシルバニア大准教授、授業で「ChatGPT」利用を奨励--「目覚ましい」成果
https://japan.zdnet.com/article/35200385/

業務効率の向上を目的としたリスキリングを支援する「ジェネレーティブAI利用補助制度」を導入
〜人間とAIが仕事を分業する新時代の働き方へ〜
https://corp.intimatemerger.com/news/20230307_aireskilling

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