コロナ前後で人の行動はどう変わったのか、Google Trendsから読んでみた!
あっという間に9月が終わり、2023年も終盤に差し掛かりました。10月といえば季節の風物詩として定着した感のあるハロウィン、今年は渋谷区長が国内だけでなく外国人観光客向けにも「ハロウィン目的で渋谷に来ないで」と呼びかけたことが話題になっています。新型コロナウィルス感染症も5類になり、良くも悪くも新型コロナウィルス(以下、長いので「コロナ」と略します)と共存する世界が始まった今、人の行動はコロナ以前に戻ったのでしょうか。
人の行動は検索による情報収集からスタートします。Google Trendsを手がかりに読み解いてみましょう。コロナ前後の差を見るために、ざっくりと
として、Google Trendsによるさまざまなキーワード検索の傾向を見てみます。
コロナ中も変わらない「ハロウィン」、「渋谷」をつけると自粛要請の効果が見える
手始めに「ハロウィン」をGoogle Trendsで見てみましょう。2004年からの国内のトレンドを見てみると、2015年をピークに少しずつ下がっており、コロナ前の2019年10月とコロナ前半の2020年10月では検索数はほとんど変わっていません。
▼キーワード:ハロウィンのトレンドではハロウィンで渋谷に集まる人はどうだったのでしょうか。「ハロウィン渋谷」とキーワードを変えてみたトレンドがこちらです。
▼キーワード:ハロウィン渋谷のトレンド
コロナにより渋谷への来街自粛が呼びかけられていた2020年、2021年には検索数がグッと減っており、呼びかけに効果があったことがわかります。対して、コロナ後半ではありますが来街自粛の呼びかけがなかった2022年には検索数はコロナ前に戻っているところを見ると、コロナ後の2023年、渋谷のハロウィンはコロナ前と同じような人出になりそうです。
ちなみに、検索エリアを全世界に広げて「Halloween Shibuya」のトレンドをみると、その傾向がさらに明確になり、コロナ後の渋谷ハロウィン復活の兆しがはっきりと見えます。
▼キーワード:Halloween Shibuyaのトレンド(全世界)
渋谷区長が外国人記者クラブで海外向けに来街自粛を呼びかけるのもうなずけます。はたして、要請の効果はあるのでしょうか。
コロナを越えたレジャー、越えられなかったレジャー
私たちの生活の中でコロナの影響を受けたと思われるのが、レジャーです。関連するキーワードのトレンドはどうでしょうか。
コロナを越えられなかった海水浴、越えそうなナイトプール
コロナ以前からじりじりと減少傾向だった「海水浴」ですが、コロナ前半の2020年夏シーズンの検索トレンドは約7割に落ち込んだ後横ばい、そのままコロナ後の2023年夏シーズンも戻る気配がありません。
▼キーワード:海水浴のトレンド
海水浴については、海岸の暑さが厳しすぎる、紫外線を気にする人が増えたなどの理由で、コロナ前から海水浴客の減少が続いていたという状況もあります。そこにコロナが追い討ちをかけたということがトレンドからわかる結果となりました。
一方で、コロナ後に復活の兆しを見せているのが「ナイトプール」です。2017年にブームの後少し落ち着きましたが、コロナにより2020年、2021年夏シーズンはコロナ前の半分以下となりました。ところがコロナ後半の2022年以降はコロナ前には及ばないものの明らかに増加しており、復活の兆しです。水遊びも猛暑を避ける人が増えているようです。
▼キーワード:ナイトプールのトレンド
コロナを潜伏してやり過ごした花火大会
一方で、夏のレジャーで完全な復活を遂げたのが花火大会です。コロナ中の2020年、2021年は花火大会そのものがほとんど中止となったこともあり、検索トレンドはほとんどなくなりましたが、いくつかの大会が開催された2022年には急速に戻り、隅田川花火大会をはじめとする主要大会が開催された2023年にはコロナ以前の水準まで完全に戻っています。
▼キーワード:花火大会のトレンド
「コロナ特需」で乗り切ったキャンプ
一方、コロナによってトレンドが押し上げられたのがキャンプです。コロナ前半の2020年8月、コロナ前の1.3倍にトレンドが跳ね上がり、その後2021年、2022年の5月と8月にもコロナ前よりも高い水準で検索されています。
▼キーワード:キャンプのトレンド
2020年の夏は、最初の緊急事態宣言が終わったにもかかわらず、都道府県境を越える移動の自粛が強く要請されていました。旅行や帰省ができない夏休みに、自然の中家族や仲間だけで行動するキャンプは、「密を避けて」楽しめるレジャーとして注目された様子がGoogle Trendsから伺えます。コロナが5類感染症になり、移動に縛りがなくなった2023年のゴールデンウィーク、夏休みのトレンドがコロナ前の水準にまで落ち着いています。特需といえる状況も終わりを迎えつつあるようです。
もう一つ、コロナとは無関係ですが、「キャンプ」のトレンドで興味深いのが月ごとのトレンドです。もともと5月に小さい山、8月に大きい山と2つのピークがあるトレンドですが、2017年ごろから5月と8月の差がどんどん縮まっています。2020年5月は緊急事態宣言中でしたので例外として、2021年、2022年は5月と8月のピークがほぼ同じに、そして2023年は5月の方が高くなっています。これももしかすると海水浴と同じで「8月は暑すぎる」温暖化の影響なのかもしれません。
完全復調かと思ったら円安でブレーキがかかるパスポート
キャンプと逆のトレンドで動いたキーワードが、海外旅行と関連の深い「パスポート」でした。コロナ直前の2020年2月からトレンドが急減し、2022年秋頃までは低調でしたが、2023年に入ってからはまもなく移動が自由になることを見越してか検索トレンドが急上昇しました。完全にコロナを乗り越えたと思ったのですが、またじりじりと下がりつつあるのは円安のせいなのでしょう。
▼キーワード:パスポート
コロナで変わった働き方は元に戻らない
コロナによって働き方が大きく変わりました。2020年4月、緊急事態宣言により通勤通学も含めた外出自粛が要請され、多くの会社がリモートワークを取り入れました。「リモートワーク」はGoogle Trendsでも2020年4月に急上昇して、以後減少しつつもここ2年程度はピーク時の4分の1程度で落ち着いた数値となっています。
▼キーワード:リモートワーク
一方で、減ったのは会社全体や部署で行われる飲み会でしょう。「歓迎会」「送別会」のトレンドを見てみましょう。歓迎会は4月、送別会は3月に毎年ピークがくるのでそこに着目します。
▼キーワード:歓迎会
▼キーワード:送別会
どちらもコロナで一気に減っていますが、歓迎会の方がより減り方が激しいです。2020年に関しては、緊急事態宣言発令前の3月と比べて発令後の4月の方が大きく減っているとも考えられますが、2021年以降も送別会は3月にわかりやすいピークがあるのに対し、歓迎会のトレンドは低めです。歓迎会に比べて送別会は延期が難しいので(主役がいなくなってしまうわけですから)、多少無理してでも実施することが多かったのかもしれません。とはいえ、2023年になってもどちらもコロナ前の半分程度までしか回復しておらず、これはコロナを生き残れなかったキーワード候補になりそうです。
コロナを越えた年末年始のキーワードは何だったのか
さらに減り方が激しいのが、年末年始の「忘年会」「新年会」です。新年会はコロナ前の4割程度、忘年会はコロナ前の3分の1程度までしか回復していません。
▼キーワード:忘年会
▼キーワード:新年会
一方で、年末のイベント「クリスマス」のトレンドは、コロナ中もほとんど変わらず安定しています。
▼キーワード:クリスマス
年初のイベント「初詣」は、コロナ前半の2021年の正月こそ落ち込みましたが、2022年以降はほぼ回復しています。
▼キーワード:初詣
忘年会や新年会がコロナで衰退する一方でクリスマスや初詣はコロナ以前に戻っています。コロナをきっかけに会社や仕事の人間関係は変わりましたが、家族や親しい人との関係は変わらず続いているということなのかもしれません。