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Googleの3rd Party Cookie規制の経緯と今後の展望

セミナーなどでもお話をさせていただく機会は増えていますが、まだまだ全体像が理解できていないという質問をいただくことも多かったりするので改めて、Googleの3rd Party Cookie規制の経緯と今後の展望をまとめました。

3rd Party Cookie規制の経緯

当初の規制計画

Googleは、ユーザーのプライバシー保護を強化する目的で、3rd Party Cookieの規制を段階的に実施する計画を立てていました。当初の予定は以下の通りでした:

  1. 2024年1月4日:Chromeブラウザユーザーの1%を対象に規制のテストを開始

  2. 2024年中:テスト範囲を段階的に拡大

  3. 2025年初頭:完全規制の実施

この計画は、デジタル広告業界に大きな変革をもたらすと予想されており、多くの企業が対応策を模索し始めていました。

計画の変更と撤回

しかし、テストの結果が予想を大きく上回る影響を示したため、Googleは計画の見直しを余儀なくされました。

  1. 2024年4月:Googleは完全規制の実施時期を後ろ倒しにすることを発表。影響の大きさを受けて、より慎重なアプローチを取る姿勢を示しました。

  2. 2024年7月:さらなる調査と検討の結果、Googleは3rd Party Cookie規制の撤回を電撃的に発表。この決定は、デジタルマーケティング業界に大きな衝撃を与えました。

規制撤回の背景

1. 広告業界への甚大な影響

テストの結果、3rd Party Cookieの規制が広告業界に与える影響が予想以上に大きいことが明らかになりました:

  • メディアの広告収益が最大60%減少:多くの出版社やメディア企業の収益モデルに深刻な打撃を与える可能性が示唆されました。

  • 広告の読み込み時間が100%以上増加:ユーザー体験の著しい低下につながり、ウェブサイトのパフォーマンスに大きな影響を及ぼす恐れがありました。

  • 広告主側の広告効果が60%低下:効果的なターゲティングやリターゲティングが困難になり、広告投資の効率が大幅に低下する可能性が高いことが判明しました。

これらの影響は、デジタル広告エコシステム全体を脅かす可能性があり、業界全体の持続可能性に疑問を投げかけるものでした。

2. プライバシー保護の課題

Googleの競合他社、特にAppleは、Googleが提案する代替ソリューションでもプライバシーが十分に保護されないと主張しました。この批判は、以下の点を指摘していました:

  • Googleの提案する解決策が、真の意味でのプライバシー保護につながらない可能性

  • ユーザーデータの集中管理によるリスク

  • 代替技術の導入による新たなプライバシーの脅威

これらの指摘は、Googleの規制案の正当性と実効性に疑問を投げかけることになりました。

3. 業界団体からの反対

規制案に対しては、広告業界からも強い反対の声が上がりました:

  • IAB Tech Lab(米国のインタラクティブ広告業界団体):規制がデジタル広告の効果を著しく低下させ、業界全体に悪影響を及ぼすと警告しました。

  • Criteoなどの広告テクノロジー企業:既存のビジネスモデルが成り立たなくなる可能性を指摘し、代替ソリューションの開発に時間が必要だと主張しました。

  • Google自身の広告チーム:社内でも意見が分かれ、広告チームからは規制案の実現可能性や影響について懸念が表明されました。

これらの声は、規制案が業界全体のコンセンサスを得られていないことを浮き彫りにしました。

今後の展望

1. ユーザー選択の重要性

規制撤回後、Googleは「Informed Choice」(情報に基づく選択)という新しいアプローチを提案しています。このアプローチの特徴は以下の通りです:

  • ユーザーが広告表示やトラッキングを選択できる仕組みの導入

  • AppleのApp Tracking Transparency(ATT)に類似したシステムの可能性

  • オプトイン形式の採用が予想される

このアプローチにより、以下のような変化が予測されます:

a) ユーザーの選択権の強化:

  • 広告トラッキングの許可/拒否をユーザーが明示的に選択できるようになります。

  • プライバシー意識の高まりにより、多くのユーザーがトラッキングを拒否する可能性があります。

b) 広告効果への影響:

  • AppleのATT導入後の事例から、広告トラッキングを許可するユーザーは15-20%程度に留まる可能性があります。

  • これにより、現在40%程度のChrome上でのサードパーティクッキー取得率が大幅に低下する可能性があります。


c) 新たなマーケティング戦略の必要性:

  • トラッキングを許可しないユーザーに対する新たなアプローチが求められます。

  • コンテキスト広告やファーストパーティデータの活用など、代替IDの重要性が増します。

d) プライバシーとパーソナライゼーションのバランス:

  • ユーザーのプライバシーを尊重しつつ、効果的な広告配信を行う新たな方法の模索が必要になります。

  • 透明性の高いデータ利用ポリシーと、ユーザーへの明確な価値提供が重要になります。

まとめ

今後もGoogleのChromeにおける3rd Party Cookieの取り扱いに関する変化は行われていくと考えられます。企業は、ユーザーの選択を尊重しつつ、効果的なマーケティング戦略を再構築する必要があるでしょう。

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